行動こそが価値を生む

地域リブランディング講座の第5回目の講師は、株式会社GRA代表取締役CEOの岩佐大輝さん。1粒1000円の“ミガキイチゴ”でご存知の方も多いかもしれません。(「ミガキイチゴ」と聞きつけて、宮崎でいちご農園を営む2件の農家さんも飛び入り受講されていました。)

岩佐さんは講義開始前に、会場に集まってきた受講者一人ひとりにご挨拶され、会場の雰囲気も和やかにスタートしました。

 

震災からの使命感

岩佐さんは1977年宮城県山元町生まれ。上京し、大学在学中に起業。しかし、東日本大震災で故郷山元が大きな被害を受けたことを目の当たりにし、自分の体が破壊された感覚になったそうです。「この町を復興させるのは自分の体を復興させることと同じ。自分ができることはなんだろう?」そんな使命感が岩佐さんを奮い立たせました。

震災によって山元町は人口の4%を、いちごハウスの95%を失いました。当時、岩佐さんはボランティアとして活動していましたが、「肉体労働もいいけど、経済を、雇用を、とにかく何とかして欲しい」という地元の人の強い声からGRAを設立しました。

GRAグループのビジョンは「10年で100社10,000人の雇用機会を創ります」。こうして山元町にいちご産業を立ち上げて、光り輝く街に生まれ変わらせる活動がスタート。こうして岩佐さんは先端施設園芸を軸として「地方の再創造」をライフワークとするようになりました。(現在日本及びインドで6つの法人のトップを務められています。)

 

グローバルレベルで勝負できる産業


そこで一つの仮説が提示されました。「どのような条件にある地域でも、そこにグローバルレベルで勝負できる産業があれば、その地域は必ず再び栄える」。そう、その地域がどこにあるかではなく、どんな人がいてどんなコンテンツがあるかが重要なのです。それでは一体、いちごにはどんな可能性を秘めていたのでしょうか。

 

いちご施設園芸の市場特性


岩佐さんから会場へ「いちごの市場規模は?」という質問が。「5億」「5000億」などの声が上がりましたが、正解は「1748億円」。これは日本の果物で最大となります。

また、いちごの消費推移一年間支出金額を見ると、メロンは減っているのに対し、いちごは安定しています。これはメロンは贈答用のマーケットが半分以上を占め、贈答用のマーケット自体が年々減少傾向にあります。一方、いちごは食べる手間もかからず実需なので、この先もマーケットは大きく変動しないといえます。

また、形や色の可愛さも特徴で、いちごは日本人の最も好きなフルーツ30年連続1位というデータもあります。このように、事業を始める前に、自分が扱う商品の市場規模などをおさえることが成功の一歩となります。

 

年間雇用の創出へ


2012年6月、銀行から数億円を借り入れ、先端園芸施設を竣工。本格的にITと匠の技を駆使したいちごの栽培を開始しました。そして、品質やストーリを価格に転嫁し、「ミガキイチゴ」という一粒1000円の価値がある、イチゴブランドを確立しました。(ミガキイチゴとして出荷できるイチゴは、全収穫量の0.2%しか採れない希少価値の高いもの)。今では「白いちご」という化粧品や「ムスー」や「カネット」といったミガキイチゴを100%使用したスパークリングワインを展開しています。

このように加工品を展開し始めた理由は、「いちごの価値を高めるため?」『利益拡大?」「廃棄品を利用?」など、受講者からも様々な声が上がりましたが、一番は「雇用を拡大するため」。これは「雇用機会を創る」というビジョンに立ち返った現れ。というのも、いちごは半年間しか収穫ができず、年間雇用を実現させるために、在庫管理ができ、規模の経済が効きやすい加工品の展開を始めたのです。

 

山元町民の誇りの熟成

農園に併設された「ICHIGO WORLD」という観光農園には、世界各地から年間2万5000人の方が訪れています(人口1万2000人の山元町にですよ!)。また、新規就農支援事業をスタートさせ、2016年には日本だけでなくインドにも農場を展開し始めました。また、新しい取り組みとして、オリジナル品種を開発中だそうです。(「ヒロキング」「イワサクラ」なんてどうですか?と会場の笑いをとっていました)

このような動きに「オラのまちで生まれたイチゴ技術とブランドが、世界中に広がっている」と、山元町の人は誇りを感じる機会が増えたそうです。地方創生、つまり地方が持続可能な発展をとげるには、経済的な価値の創出と、地域民のプライド=誇りの熟成がキーワードになってくるのです。

 

5つの大切なこと

最後に、岩佐さんが思う5つの大切なポイントを教えてくださいました。

1、脱ステップ論

「地方が世界のマーケットに到達するには東京を経由する」という段階的な考え方ではなく、「世界と自分の地域」という考え方で戦略をうてるのが、現代なのです。

2、極をとる

賛成と反対を問われた時に、私たちは「毒にも薬にもならないエリア」を選択しがちですが、敢えてどちらかの極を取り、自らを批判にさらすことを時々行うといいそうです。(いつも行なっていると友達が減るので注意しましょう、とのことです。)

3、マルチパラレルリーダーシップ

都会(世界)ー地方(国内)
形式知ー暗黙知
営利ー非営利
効率性ー創造性

というように、普段の自分のいる環境と全く違う世界に触れる機会を意識的に取ることが、イノベーションの源泉になるのです。

4、PDPDPDCA

PDCAサイクルは業務改善の手法の一つですが、高速に発展する世の中で事業を発展させるには、球数( PD)を多くうつ必要があります。

5、脱リソース論

リソースは思想や理念から生まれるのではなく、思想や理念をベースとした行動から生まれるということ。つまり、人や物やお金は行動に集まってくるということで、モメンタム(勢い)の芽をつくる小さな行動の積み重ねが大切なのです。つまり、行動こそが価値を生むのです。

最後の質問タイムでは終了ギリギリまで、ブランド、地方創生、イチゴ生産技術についての質問が寄せられ、充実した2時間の講義となりました。

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