正しさではなく、楽しさで人は巻き込まれる

地域資源リブランディング講座の第7回目の講師は、但馬武さん。2016年までの約20年間、パタゴニアに勤務。ダイレクトマーケティングや顧客エンゲージメント戦略推進を担当。勤務の傍ら「ビジネスを通じて社会を変えること」を理念に、企業と顧客とのエンゲージメント戦略を立案・推進し、企業変革をサポートしてきました。また、欲しい未来を創りたいNPOやソーシャルビジネスを展開する人々が集うコミュニティー「home」を運営。2017年1月から岡山県西粟倉村に本社を置くエーゼロ株式会社に参画されています。

但馬さんは、 なんといっても「会場の雰囲気づくりが絶妙」という印象。まず各テーブルで自己紹介や雑談をしてもらい、但馬さん自身も靴と靴下を脱いで自然体となり、グッと受講生との距離を縮めていらっしゃいました。

そして、前置きとして「この講座で得られること、得られないこと」を提示し、「答えは得られないけれども、いい問いを残せたら」と但馬さんは話されました。

 

孫の時代に地球環境を良い形で引き継ぎたい

但馬さんは約20年間パタゴニアで働かれていました。パタゴニアの経営理念は「最高の製品を作り、環境に与える悪影響を最小限に抑える。そして、環境危機に警鐘を鳴らし解決に向けて実行する」。但馬さんも入社後、様々な経験を経て「孫の時代に地球環境を良い形で引き継ぎたい」という思いが、行動を決める時の価値観になっていきました。しかし、「パタゴニアで売上を10倍にしても、環境問題は1/10にしているわけではない」と、森林問題、ダムの問題、原発の問題など、様々な環境問題に向き合うに連れて、自分の人生を見つめ直したそうです。

 

正しさではなく、楽しさで人は巻き込まれる

但馬さんはパタゴニアが大好きで、むしろ今でも靴下一つにしてもパタゴニアを選んでしまうほどブランドへの愛着を持っていますが、仕事を通して「このブランドを通して、正しいことを言っても、正しいことは伝わらない」と思うようになりました。パタゴニアで正しいことを伝えることは、自分自身は楽しかった。でも、「正しさではなく、楽しさで人は巻き込まれる」と気付き、退職することへと気持ちがうつって行ったそうです。

 

未来を作る企業の伴奏者へ

社会問題の多くは、ビジネスによって引き起こされていると分析した但馬さんは、「そうであるならば、解決できるのもビジネス」ということで、2016年パタゴニアを退職し、現在は「未来を作る企業の伴奏者」として、中小企業を中心に「存在意義&ビジョン策定」「アクションプラン策定」「マーケティングプラン策定&推進」などを行うコンサルティングをされています。そして、とある地方の農場のお手伝いしていた時に、「環境問題が起こっているのは地域だ」と気付き、地域に関わる仕事を選択するようになります。現在はエーゼロ株式会社に参画し、北海道厚真町ともお仕事をされ、主に「ローカルベンチャーを増やす、育成する」「地域にある企業の成長を支援する」「ふるさと納税を拡大する」「関係人口を増やす」など、地域に根ざした取り組みをされています。

後半は経営理念の策定に関わった様々な事例を紹介していただき、講座の最後に一人の漁師さんがスクリーンに映し出されました。

「これは、町中が原発再稼働の賛成派の中で、唯一反対している漁師さん。そんな一匹オオカミは疎まれるのが普通だけれども、彼は違った。根っから明るく、漁権を売ったまわりの漁師さんも、みんな彼のことが大好きだった。彼は自分の意見を強要するわけでもなく、ただただ自分の信じる道を生きていたんです。あぁ、彼みたいになりたいと思った。僕は今まで、正しいことを伝え、世界を変えたいと思っていた。しかし、世の中にある正しいことを伝えたいと強く思うあまり、正しいことを中心としたコミュニケーションをしてきた結果、周りにプレッシャーを与え、その焦りから思いが伝わらないことに気づいたんです。正しさを伝えることが、必ずしも正義じゃないなって、ハッとしたんですよね。」但馬さんはそう話され、講座をしめくくりました。

この講座のテーマは「愛され必要とされる企業になるためのステップ」。しかし、但馬さんのお話は、単にテクニカルな話ではありませんでした。だからこそ、受講生それぞれの心に「自分は何を伝えたいのだろう?どうやって伝えたいのだろう?そもそも、どんな生き方をしたいのだろう?」という「問い」が残ったことでしょう。そんな余白のある講義を終え、帰宅途中にそれぞれが何を思ったか。次回の講義の始めに聞いてみたいですね。

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