第2のふるさとをつくる、「関係人口」は本気になった人の数

地域に変革を起こすリブランディング講座の2回目「目的を外部化せよ~本気をデザインする~」。

前回から受講されている方同士、挨拶が飛び交います。貴重な時間を共有し、少しずつ仲間の輪ができていく。社会人にとってかけがえのない時間です。

本日の講師、片木孝治さんは、福井県鯖江市や京都府などで、アートを介して大学生と自治体を結ぶ人材育成型の地域事業に取り組んでいます。地方で生きる私たちにとって、大きなヒントが得られそうです。

福井豪雨、芸術が社会に貢献できることは何か?

片木さんは京都市中京区生まれ、京都と名古屋の大学で建築を学んで上京し、公共建築などの設計に携わっていました。

そんな中、京都市内に帰ってみたら自分の小学校が統廃合され、過疎化(ドーナツ化による人口の空洞化)していることに危機感を覚えました。(2000年当初時点での話)

それが、地域活動に関わるきっかけだったといいます。ライフワークとして地域に関わり、京都という土地ならではの、大学生の人口密度の高さを活かした活動を続けていたそうです。

そして、地方に関わるきっかけとなったのが、2004年7月の福井豪雨。

福井県鯖江市での災害支援がご縁となり、芸術が社会に貢献できることは何か、日常にアートを取り込むことができるのではないか、学生たちと考えて始まったのが「河和田アートキャンプ」です。

生活の中にアートがある

河和田アートキャンプに参加しているのは、大学も学部も入り混じった学生たちです。2017年までの14年間で、全国53大学、海外3大学の学生が参加。累積参加者数は、2018人にも上ります。

アートキャンプ、何がそんなに学生たちをひきつけるのでしょうか?

河和田アートキャンプの特徴は、イベントや講座ではなく、生活しながら、暮らしの中でアートに取り組むことです。約40日間、学生は古民家で共同生活し、まちの人とコミュニケーションをとりながら、一緒にアート作品を作り上げます。

展示空間は、地域の文化に根付いた場所。時には草刈りをして展示場所を作ったり、材料に間伐材を使ったりします。

草刈りや間伐材を採る時の下草刈りは、社会貢献にもなります。あくまでも生活の中にアートを加えるというスタンスです。

畑で実った作物の料理が作品となったり、伝統工芸士の方(鯖江は漆器の産地です)に教わりながら試行錯誤したり、濃密な時間を過ごし、作品を生み出します。

アートを通して社会問題と向き合う

鑑賞をしてもらうためのアートを作りに行くのではなく、学生たちが地域に入って、それぞれに学び、地域資源・地域文化と結びつけてプロジェクトを運営する。アートを通してどう社会問題と向き合うか。

これこそが「目的を外部化」することと、片木さんは言います。

河和田アートキャンプは、自治体と連携し、補助金ではなく公共事業として続けています。単年度ではなく、20年という時間の流れを継続することで「世代を交代する」ことを目標に掲げ、14年。これからも続いていきます。

継続することでしか作り得ない「絆」によってもたらされたものがありました。

移住定住を狙って始めたわけではありませんが、学生たちはこれまで22名が移住し、現在も19名が河和田で暮らしています。彼らは、それぞれ生業を持ちながら合同会社を作り、今も地域で取り組んでいます。

「関係人口」は本気になった人の数

最後に片木さんは、これからの地域に重要な「関係人口」について話しました。

遠く離れていても、地域をサポートする人。アートキャンプを終えた学生たちは、河和田に「行く」ではなく「帰る」という言葉を使い始めるそうです。

学生たちは自分のために、自分が好きなことをする。それが地域のためになるという”成功体験”から、地域への感情移入が始まっています。

現地にいない時も河和田について考え、関わります。多い人は、4年間で280日間、地域に訪問・滞在します。学生から参加費も取ります。自分のためですから、本気です。この本気で、初めて「第2のふるさと」、心に刻むふるさとになっていくのだと思います。

これからも関係人口を増やしていく河和田地区。多くの地域が抱える課題への取り組み方を教えてくれる講座となりました。

寄稿:川越 祐子

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